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Rock Your Worldを味わう夜

▽自分語り〜この記事を書くに至った背景〜(読まなくていいです)

Moonlight walkerリリース当時、私はRock Your Worldが収録されていることを知らなかった。特典DVDを2回だけ再生して、あとは姉に貸したままCDの存在を忘れていた。

その年のABC座を観劇してから、Smiling Againばかり聴いては日生劇場に思いを馳せ涙に暮れていた。

観劇していない姉にしてみるとSmiling Againはあまり響かなかったようで、

「それより私はRock Your Worldが一番好き」

これに対し私はなんと

「そんな曲あった?他のCDと間違えてない?w」

100%の疑いの気持ちを持って返したことをよく覚えている。(マジで言った。)気を悪くした姉と大人げなく「ある」「ない」の言い合いをして、CDを確認すれば済むのに険悪な雰囲気のまま時間が流れた。

しばらくして少クラでRock Your Worldが披露された。この時の印象は“イントロが胡散臭い”、“ゲリゲリとジリジリでゲッダンするだけの曲”、“戸塚祥太ネリネリ”。この時期に披露するということはやはり最近リリースされたのだと思い、いつの間にか姉から返ってきていたCDを一枚一枚確認すると、当然だが確かに収録されていた。Crazy Accelのように一目惚れしたわけでもないし、あまり好きな曲だとも思わなかったが、CDを持っているのにWALKMANに入れていない曲があるという事実だけが許せず、嫌々取り込んだ。

以降ミュージックライブラリの肥やしとして長い間再生されず眠っていたこの曲が、ある日突然私の耳に流れ込んでくる。

 

 

日曜日の夕方だった。惰性で聴いていたMoonlight walkerの後に続く当該曲。普段は早送りするのだが、寒さのあまり毛布から手を出してWALKMANを操作することさえ億劫だったのだ。

胡散臭いと思っていたイントロは気になる前に過ぎていた。ボーッとしていたからか、歌詞が素直に頭に入ってきて、ほぼ同時に画が浮かび上がる感覚があった。頭の中の私が、ほろ酔い気分で新橋の夜空を見上げ、意味ありげに「月が綺麗」と呟いていた。

 

戸塚祥太「君の答えなんでしょ?」

「今も分からないけど」と前置きした上での、このフレーズ。「君の答えなんでしょ?」は、YESかNOでしか答えられないクローズ質問である。ド序盤だがここまでの文字だけを見ると“自分に都合良く解釈する浅はかな男”としか映らない。けれどこのパートの戸塚祥太の虚ろな声と弱々しい語尾が余りに自信無さげで、心の中での「君」への問いかけでありながら、後に控える展開への言いわけにしつつ、覚悟を決めるため自分自身に言い聞かせているようにも見えるからたまらない。戸塚祥太をベースに幾重かの声が重なり、厚みではなく奥行きが演出されているのが肝。私が好きだから(!)勝手にベースが戸塚祥太だと決め付けているけど、聴けば聴くほど誰の声なのか分からない。これは「僕」の心中そのもので、天使と悪魔が言い合いをするように「僕」にもここに来るまで葛藤があったのだろう。天使は『相手の精一杯の意思表示を汲み取ってあげようよ』と背中を押したかもしれないし、悪魔は『己の欲望に忠実に生きよう』と囁いたかもしれない。「僕」の中のどの「僕」の声か判別できないけれど、「握り返した強さ」を「答え」だということにしたのだ。

 

▼橋本良亮「僕だけの 人にはならなくても」

出た。A.B.C-Zの曲はす〜ぐ相手に翻弄される。難攻不落の城とか高嶺の花に挑みがち。「-報われない- やり切れない」し、「闇にすがり明日に戸惑う」し、「攻め続けられても拒めない」し、挙げ句の果てには「ありきたりだった毎日 変えてくれた」とか言いながら殉職しちゃう。だからこそ前述の自信無さげな「君の答え〜」が活きてくるというものだ。しかし当該曲のA.B.C-Zは強気(当社比)で攻め進む。なんせここまでに「君をそっと 抱き寄せ」た上に「楽しもう 何も怖くないでしょ?」を経ている。超オラついてる(当社比)。

 

▼「そっけない態度で 隠した本音も その目で見つめられると バレそうな気がするよ」

ラブソングによくある描写である。想像に容易い。前述のとおり、A.B.C-Zの曲は相手に主導権を握られがちながらも今回は翻弄されっ放しではないので、

 

▼「笑って何かを言いかけた 唇に キスして」

当該曲の目玉。不意打ちのキス。キスマイもびっくり。(しない)初めて聴いた時にはもう本当に驚いた。今キスしちゃう!?雑踏の中で!?喋ろうとしたのに!?塞いじゃう!!??オラみがすごいんじゃ〜

 

▼「戸惑いや不安も 今夜だけは スパイスにして」

はい、ありがち。マイナス要素さえ演出のひとつにしちゃうやつ。でも大好きな曲だからいいよ許すよ。八角とかクチナシってそのままじゃただの木の実でとても食べられたものじゃないけど、中華料理に入れると(やっぱり入れて良かった)って思うもんね。当該曲は豚の角煮だったのだ。なるほど、ずっと一緒にいたい。

 

▼第一次「ジリジリジリジリ」

ここでの「ジリジリ」は心焦がれる様子だと解釈。恋の炎が燃え上がり、豚の角煮が焦げていく。

 

▼ラストサビ橋本良亮「素顔が見たいから」

これに尽きる。この為に聴いているし、徹底的に真似したい。展開も演出もやはりJ-popにありがちだが、もうエモ過ぎてそれどころではない。トドメを刺すためのマウントを取りにきている。裏の「フッフゥ〜ヒィェエ〜」に何故か焦燥感もある。

 

▼「今さら 後戻りはないでしょ?」

序盤の気弱さはどこへやら。やや暴走気味ではあるが、元はと言えば「君」がはぐらかしつつも「指先を 握り返した」からこういうことになったのだ。直前の「ほら行こう」に対し渋ったのかまたはぐらかしたのか知らないが、もうここまで来たら身を委ねるしかない。熱い夜を。

 

▼第二次「ジリジリジリジリ」

最後にキス(または豚の角煮)を求めてにじり寄る、物理的な距離を詰める様子だと解釈。

 

 

さて、ここまで読んでくれたあなたの脳内にも、夜の街に消えていく二人の背中を傾いた月が冷たく照らす画が浮かんでいることだろう。お疲れ様でした。豚の角煮食べよう。